#20 まっしろな正義
黒にも白にもなれず煮えきらない。
そこにそぐわなければ離れていかれることも仕方ないとさえ。
その白の痛いほどの潔癖さはわたしなど足元にも及ばない。
「自分に嘘をついてまで、あたしは大人にはなりたくない!」
とはっきり言った。
時には、自分が正しいと思う通りに動かなかったわたしを
数カ月に渡って無視したり。
あるいは悦に入って何時間も説教を垂れたり。
この人にも白か黒しか選択肢はないのだ。
しかもグレーやマーブルは逃げた色で
まして白を曲げて別の色を選ぶなんて
人として許せないと信じている。
そして許すに値しない人は攻撃しても良い、と。
いよいよとなったら誰かを攻撃してしまうのだろうか。
彼女に幾度もざん、ざんと斬られ涙を流しながら
そもそもわたしが正義と信じるものは唯一無二なのだろうか。
そしてそれ以外の考えは全て間違っていると断じてよいのか。
数年かけて出た答えは、否だった。
そんな簡単な答えに気づくのに数年かかるほど
わたしとわたしの真っ白な正義とのつきあいは長いし根深かった。
かと言って、力尽くで引き離してしまえば傷が残り
いずれ何かの拍子に疼いてしまうだろう。
ならば。
きっとそれぞれに居場所を作ることができるのではないだろうか。
あなたはここね、きみはここ。
そんなイメージで少しづつ心を整えていくようになった。
さらには、他の誰かに対しても。
いろんな色がある方がいい、と今は曇りなく言える。
件の彼女のことはまだ怖いけれど、
その怖がる心もまたれっきとしたわたしの中の住人なのだ。
ちいさくも無限のわたしの心の中で
他のものたちと折り合って生きていくだろう。
なんにせよ、無くなることはないのだから。
意外にもとてもやさしく響いて
しばし立ち尽くしたのかもしれない。
そのことに気づけた今、言えるのは。
折り合いをつけることは
わたしにとっては逃げることでも濁すことでもないということ。
それは心を整然と手当てするに必要なことだった。
わたしの中のひとつの場所に、
すこし恥ずかしそうに肩をすぼめて座っている。
どだい正義なぞ、そのくらいでちょうどいいのだ。
text by haru photo by sakura
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