クリスマスのおくりもの



しっとりとすべらかな白は

きみによく似合う




僕はずっとそう思っている





凍てつく空気が

光を纏った朝





ふわり、風にのり

きみのもとへと行けたんだ





窓枠で頬杖をつき

長い時間をかけて

ぼんやりと

空を見つめていたきみは





時おり

口にあてた人差し指を

甘く嚙むような仕草をみせ





そう、それは

いっしょに暮らしていた

あの頃のままで、

僕はたちまち

二人だった時間に戻ってしまう





たとえば思い出すのは

出逢って何度目かのクリスマス





ふっくらと、白い両の手を

口にあて、息をのみ





黒い瞳を

艶と濡らして




僕が差し出したちいさな箱を

喜んで受け取ってくれた日のこと、だろうか





あるいは

仕事に集中している僕の横で

気づけば

しかめ面で仁王立ちしていた

そのふくれた頬だろうか





ねえ、いったい

きみは

何を想って

空を見あげている?





刹那、

風が立ち

木々が鳴り





きみの目が

かちり、と

僕を捉えた気がした





「おばあちゃん!」





可愛らしい声が

きみを呼ぶ





今宵は

家中が芳しい香りに満たされ





にぎやかで

穏やかな時間が

ちゃんと

きみをくるんでくれることだろう





風は止み

かたり、と椅子を引いて

きみが立ちあがる





そうだね

僕も往くよ





まだもう暫く先だろうけれど





つぎの僕も

また、かならず

きみを見つけるから





なんて

歯の浮くようなことを言ったら

「そんな調子いいこと言って」

と、きみは

頬をふくらませてみせるだろうか





それなら

それも悪くない、と





僕は

凪いだ風に言い置いていく










merry  christmas!











text by haru  photo by sakura









こはる日和にとける

いつかの情景、いつかの想いを綴るエッセイ

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